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2013年7月 6日 (土)

へたうま

「へたうま」とは、絵画や音楽の世界で使われる言葉で、「本当に描けば(弾けば)みんなうまいのですが、わざとヘタに見える(聴こえる)ようにしている」状態をいいます。一見ヘタそうで、その分野で要求される技術を満たしていないようなのですが、実際は、その整った枠組みをはずしたり、歪めたり、壊したりして、新しい表現を模索しているのです。

卑近な例をあげれば、相田みつをさんの名言の書体にみられるように、ヘタそうなのですが、逆にそれが個性や味わいとなっています。かの天才ピカソも、正確なデッサン力をもって写実的に描いたものを、デフォルムを極め、破壊から創造へと繋げています。誰だって最初は、あの見えない裏側までえがかれた横顔に驚いたものです。

クラシックの世界でいえば、バイオリンの巨匠ヨーゼフ・シゲティではないでしょうか。彼の奏でたバイオリンは、音が始終ゆれたり、かすれたり、音の流れがぎこちなかったり、現代のコンクールなら予選で落選間違いなしなのに、誰もが、彼の右にでるものがいない、といいます。

「ヘタウマ文化論」を書いた、イラストレーターの山藤章二さんによれば、この言葉を最初に使ったのは、糸井重里さんだそうですが、山藤さん自身、週刊誌の似顔絵塾で、盛んにデフォルムをすすめています。いわれてみれば、漫画家だって、本当は、写実的に描けば、とんでもないほど上手い絵を描きますが、それは少しも面白くないから、マンガチックに描いているのでしょう。

ヘタウマでなく、逆に「上手過ぎて、なんだか物足りない」と感じてしまうことがあります。「技術的にすごかったけれど、なんだか心に残らない」というのは、どんな場合にもみられます。これは、ウマいのだけれど、結局はヘタにうつるので、「ウマヘタ」とでもいうのでしょうか。

研修講師の先生の中には、型にはまったものを見事にルーティン化して講義される方もいらっしゃいます。そのような先生は、誰かの講義の内容を丸のみされて、語り口まで同じにされているのでしょうか、流れるように話され、一見ウマいようですが、抑揚がなく、単調に思えます。これでは「ウマヘタ」で、受講生の心にとどくわけがありません。

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